木の中に
音がある。

木の中にはその木の音がある。
木が振動して音を出す。
だからもうそこで音が決まる。
大切なことは自分がどんな音色を作りたいか。
どういう音を出す楽器を作りたいか。
どこからか声が
聞こえてきて、
木へと導かれていく。

私が選んだ木というのは、実は私を選んでくれた木。
それは木の精に選ばれたということ。
名工カピキオーニの唯一の弟子になり、
そのカピキオーニが教えてくれたこと、
それは木と友達になること。そして、自分の音色を作ること。

神様ウィリアム・プリムローズ
との出会い。
世界的な弦楽器奏者のウィリアム・プリムローズが
東京芸術大学に客員教授として招かれた時に
ヴィオラを作って見せに行った。
調弦もしないで、いきなり弾いて、その瞬間眼の色が変わった。
「おまえどこで修行した?」
「イタリアです」と答えたら、
This is the best Viola, I have ever played.
(これは今までに弾いたヴィオラの中で、一番いいヴィオラだ)
って言ってくれた。
以来、ウィリアム・プリムローズは飯田の楽器を愛用するようになった。

樅楓舎とは
ヴァイオリン、ヴィオラ、
チェロの製作工房。
1972年、イタリアの弦楽器製作の巨匠、
マリノ・カピッキオーニの下での修行を終え、帰国していた、
飯田裕(いいだ ゆう)によって設立された。
ここで生まれる楽器について特筆すべきは、
材料の樅(もみ)の全てが、北イタリアで、
飯田自身の手によって選ばれ、伐採されたものであるということである。
「樅楓舎」の名は、
ヴァイオリン属の材料である、樅、楓(かえで)から。